MBSE Learning Journey Showcase 2026 Autumn
高田広章 教授・David Hetherington 氏の特別講演と、村上和幸 氏の講演と懇親会
対象を抽象的(Abstract)に捉えることで実装に自由(Freedom)を与える。複雑なシステムをシンプルに表現し、シンプルに表現されているから理解可能になり、理解可能だからコミュニケーションが促進される。MBSE 方法論の考え方とアプローチと効能を、実践者の講演と対話を通じて理解体感する1日。MBSE Learning Journey 参加企業による実践事例の紹介と、登壇者3名との議論の時間も設けています。
- 開催日
- 2026年10月26日(月)
- 時間
- 9:20–18:10
- 会場
- ヤマハ発動機株式会社 リジェラボ(横浜共創スペース)神奈川県横浜市西区みなとみらい5-1-2
- 開催形式
- 対面
- 主催
- リベラルロジック株式会社
- 使用言語
- 日本語・英語(逐次通訳あり)
- 申込締切
- 2026年10月16日(金)まで
- 定員
- 最大100名(定員に達し次第、受付を終了します)
登壇 高田 広章 教授・David Hetherington 氏・村上 和幸 氏
参加費 一般 8,800円2026年9月30日(水)まで早期割引 一般 13,200円2026年10月1日(木)から 学生 2,200円
いずれも税込。昼食・軽食・夕食(懇親会)を含みます。
開催趣旨
MBSE 方法論は、複雑な問題をシンプルにすることで理解を促進し、理解できる形にすることで相互対話を可能にするいわばエンジニアリング基盤を整えるものです。これを適用することで、開発現場から無駄と無理を減らすと共に、スムースなコミュニケーションと価値創造によって効果的・効率的な課題解決を実現できます。このように大変有用な MBSE 方法論ですが、実務に適用できる形で触れられる機会は多くありません。本を読み、ツールを触っても、「自分の現場でどう使うのか」という問いの前で止まってしまい、開発の現場へ寄与しないといったことも少なくありません。このイベントを通じて MBSE 方法論の核となる部分をご理解頂き、現場への実践展開のヒントにして頂ければと考えます。
本イベントで扱う MBSE 方法論とは?
Tim Weilkiens 氏の SYSMOD
MBSE は「モデルを中心に据えて開発する」という考え方の総称で、それ自体は進め方を教えてくれません。何をどの順序で考え、何を決めるのか。それを定めるのが方法論です。本イベントで扱う SYSMOD は、SysML v1/v2 の共同開発者である Tim Weilkiens 氏が体系化した MBSE 方法論で、MBSE Learning Journey が日々たどっている土台でもあります。誰が、何を、どんな手法で行うのか。そこまで決まっているから、実務で使えます。
ドキュメント中心的アプローチとモデル中心的アプローチ
MBSE アプローチの場合のプロセスと、ドキュメント中心的アプローチの場合のそれとを比較してみてください。問題を分析し、要件を整理し、アーキテクチャを組む。活動も順序も、変わりません。 違うのは、その結果をどこにどのように置き、どのように利活用するのかです。
テキスト・文字列の要件群をユースケース化した(要件群をグループ化した)2つの例を見比べてみてください。WHAT は同じで、HOW が違うだけだとわかると思います。
ドキュメントでもモデルでもプロセスは同じです。文書の場合、書かれた内容が他の要件やアーキテクチャと食い違っていても、気づく手立てがありません。モデルの場合、置かれた要素がモデルの中の他の要素と接続されるため、整合性を検証できます。
MBSE 方法論は、新しいプロセスを覚え直す話ではなく、アプローチの仕方を変える話です。
タートル図に重ねて見る MBSE 方法論
次の図は品質マネジメントの分野で使われているタートル図です。中央にプロセスを置き、その周りに、何が入り、何が出て、誰が行い、何を使い、どのように進め、何で測るのかを並べます。プロセス管理に必要な内容が網羅されています。もっとも、この1枚すら描けていない組織も少なくありません。
タートル図の上に MBSE 三本柱(モデリング言語・モデリング手法・モデリングツール)が重なり、さらに MBSE 方法論が重なります。三本柱を揃えるだけでは、道具が増えたにすぎません。MBSE 三本柱と MBSE 方法論が噛み合い、有機的に機能して初めて、誰が何をどのように行い、何が出てくるのかを追跡できる、管理可能な全体像が出来上がります。画像下部に用意されたレバーを使って、段階的な変化を体感してください。
(レバーを左右に動かして段階的な変化を体感できます)
道具立ても、進め方の決め事もない状態です。
道具立てが揃いました。誰が何をするかは、まだ決まっていません。
道具立てが揃い、誰が何をどの順で行い、何を作るのかが決まりました。
対象
製造業に従事し、開発の実務に携わる方
- MBSE 方法論に興味のある方
- MBSE に触れてはいるものの手応えを感じられていない方
- 現場課題に対して具体的な改善活動ができていない方
製造業に従事し、開発のプロセスと力量管理に責任を持つ方
- プロセス所有者(ISO 9001 / IATF 16949)
- エンジニアリングプロセスの改善チーム
- 力量管理に責任を持つ組織のリーダー
- アセスメントで審査や改善案を出すアセッサーの方
将来、製造業に従事し、開発の実務現場に就労する予定の大学生の方
- 機械工学、機械システム工学、知能機械工学、精密工学
- メカトロニクス、ロボティクス
- 電気工学、電子工学、電気電子工学
- 電子情報工学、情報工学、情報通信工学
- 制御工学、システム制御工学、システムデザイン工学、航空宇宙工学
どなたを想定しているか、なぜ対象を限っているかは、Showcase イベントについてに詳しく書いています。参加の条件は、このページの参加についてをご覧ください。
登壇者
複雑なシステムを、どうすれば作れるのか。この問いを、日本の歩みから、海外から、そして組織の内側から見てきた3人です。1日の軸は村上和幸 氏による2部構成・計3時間40分の講演で、そこに高田広章 教授と David Hetherington 氏の特別講演が加わります。

高田 広章 教授
名古屋大学 未来社会創造機構 モビリティ社会研究所 教授
1996年、東京大学にて博士(理学)。東京大学助手、豊橋技術科学大学助教授等を経て、2003年より名古屋大学教授。大学院情報学研究科附属組込みシステム研究センター長を務める。組込みシステム、リアルタイムOS、車載制御システムとネットワーク、機能安全、セキュリティなどを専門とし、組込みシステム向けリアルタイムOSを開発する TOPPERS プロジェクトを主宰する。情報処理学会フェロー、日本ソフトウェア科学会フェロー(2022年〜2025年は理事長)。

David Hetherington 氏
Asatte Press, Inc. 代表・創業者
IBM Engineering Services のシステムアーキテクト、Wind River のサイトマネージャーを経て、2011年に米国テキサス州オースティンで Asatte Press, Inc. を創業。システムズエンジニアリング、安全、セキュリティ、多言語の技術コミュニケーションが交わる領域で、出版とコンサルティングを手がける。2019年から2026年にかけては System Strategy, Inc. のプリンシパルとして、半導体・航空宇宙・自動車の各社に MBSE 戦略、ツール選定、モデリングプロセスの構築を支援。現在は、MBSE を STPA(システム理論に基づくプロセス分析)へ適用するための推奨実践 SAE J3187-3 の改訂を主導し、セキュリティへの適用を扱う J3187-4 にも中心的に関わる。INCOSE の Automotive/Configuration Management の各ワーキンググループで活動し、MBSE・STPA・システム安全とセキュリティについて各国で講演。近年は、構造化されていないステークホルダーの声から SysML v2 モデルを生成する AI の活用にも取り組んでいる。日本語の会話と読解にも通じる。人材育成にも強い関心を持ち、日本・韓国・中国の若手エンジニアが、実務の場で英語によって発表し議論する力を身につけられるよう支援してきた。

村上 和幸 氏
ジェンテックス・ジャパン株式会社 シニアリードエンジニア(製品安全・セキュリティ)
1999年から2017年までアルプス電気に在籍し、車載分野の機能安全のマネジメントとエンジニアリング、およびソフトウェア開発のグループリーダーを担当。2007年から2011年にかけては、ドイツ・ミュンヘンの ALPS Electric Europe でアプリケーションエンジニアリングのラインマネージャーを務めた。その際、欧州 OEM 企業の担当者から「村上さん SE できていないね。ん?違うな。日本企業のどこもできていないね。」との指摘を受け、システムズエンジニアリングをライフワークとすることを強く決意。この活動の中でドキュメント中心的アプローチの限界を知り、MBSE への転換を開始。この頃からドイツ在住の Tim Weilkiens 氏を訪ね、MBSE 方法論の真髄を学ぶ。その後オートリブを経てヴィオニアへ移り、システムズエンジニア/機能安全エンジニアから、機能安全・サイバーセキュリティ・SOTIF のラインマネージャー、さらに MBSE の方法論家かつ実践者として、組織への MBSE の定着を担う。2022年から2024年まではZFグループでADASの機能・アルゴリズム開発のマネージャー、2024年より現職。INCOSE ASEP、OMG Certified Systems Modeling Professional(OCSMP Model User/Model Builder – Fundamental)の認定を持ち、OMG の SysML Wall of Fame に名を連ねる。MBSE Learning Journey のファシリテーターであり、当日は講演①・②を担当。
高田広章 教授 ― 日本の組込みシステムが、どこから来たのか。 車載からロケットまで、組込みシステムの現場を長く見てきた第一人者です。いま目の前にある開発のやり方が、どのような経緯でそうなったのか。その文脈ごと語れる方は多くありません。数多くの実プロジェクトを見てきた第一線の研究者だからこそ、これまでの日本の開発とこれからの日本のあるべき姿について示唆に富む内容をお話し頂けます。
David Hetherington 氏 ― 外から見ると、日本のやり方はどう映るのか。 日本とアメリカの双方でシステムズエンジニアリングを見てきた方で、両国の文化的な背景にも精通しています。日米にとどまらず、東南アジアやヨーロッパの実務者とのつながりから得た知見を持っています。MBSE と機能安全・セキュリティが交わる領域では、国際的な規格化(SAE J3187-3)の改訂を主導しています。
村上和幸 氏 ― 組織の中で、MBSE が実際にどう根づくのか。 自動車業界で長くシステムズエンジニアとして MBSE によるシステムズエンジニアリングに取り組み、方法論家かつ実践者として組織への定着を担ってきました。INCOSE ASEP を持ち、SysML v1/v2 の共同開発者である Tim Weilkiens 氏とも親交が深く、業界の最前線にいます。ISO/IEC/IEEE 15288 が示すライフサイクル、すなわち構想から廃棄までの全体にわたる判断の根拠を1つのモデルに束ね、整合性を検証できる形にしていく道筋と、本やツールの解説では埋まらない、適用の判断のしかたをお伝えします。
- 現場での疑問: 3名がそろう50分の議論と質疑応答の時間を設けています。そのまま御質問頂けます。
- 同じ課題に取り組む実務者: 昼食・軽食・懇親会では、他社の開発現場がどこで詰まり、どう解決していったのかを聞けます。
1日の並びも、この3つの視点をたどる形にしました。村上氏の講演①で方法論の道筋に入り、David 氏の特別講演で視野を世界へ広げ、高田教授の特別講演で日本のモノづくりについて鋭い洞察を加えます。3人の議論を挟んだあと、村上氏の講演②でもう一度、実務の具体へ戻ります。
タイムテーブル
| 時刻 | 内容 |
|---|---|
| 9:00–9:20 | 開場 |
| 9:20–9:30 | 開会式開会のあいさつ 会場の御案内と注意事項 |
| 9:30–11:20 | 村上和幸 氏による講演① |
| (昼食をお受け取り下さい)11:20–11:30 休憩 | |
| 11:30–12:25 | MBSE Learning Journey 参加企業による実践事例の紹介昼食をお召し上がりになりながら、リラックスしてお聞きください。11:30 - 11:45: 事例紹介1 (予定調整中) 11:45 - 12:00: 事例紹介2 (予定調整中) 12:00 - 12:15: 事例紹介3 (予定調整中) 12:15 - 12:25: 事例紹介4 (予定調整中)全4件・計55分 |
| 12:25–12:30 休憩 | |
| 12:30–13:50 | David Hetherington 氏による特別講演日本語への逐次通訳で進行します。 |
| 13:50–14:00 休憩 | |
| 14:00–14:50 | 高田広章 教授による特別講演 |
| 14:50–15:00 休憩 | |
| 15:00–15:50 | 軽食をとりながらの、高田広章 教授・David Hetherington 氏・村上和幸 氏との議論と質疑応答お茶と軽食をご用意します。プロフェッショナルの議論をリラックスしてお楽しみください。ご質問も承ります。 |
| 15:50–16:00 休憩 | |
| 16:00–17:50 | 村上和幸 氏による講演② |
| 17:50–18:00 休憩 | |
| 18:00–18:10 | 閉会式閉会のあいさつ 懇親会の御案内 |
| 18:30–20:30 | 懇親会(お支払いの時に参加か不参加を選択してください)夕食をご用意します。MBSE に興味のある方々との情報交換で、知見と人脈を拡げてください。 |
プログラムの内容と時間は、予告なく変更される場合があります。
1日の軸は村上和幸氏による2部構成の講演で、あいだに特別講演と3人による議論を置きました。
David Hetherington 氏の講演と質疑は英語で行われ、日本語への逐次通訳が入ります。ご質問は日本語でも構いません。日本語のご質問は英語へ通訳しますし、同氏は日本語も話せます。そのほかの講演は日本語で行われ、英語への通訳は入りません。
会場・アクセス
会場は横浜みなとみらいの ヤマハ発動機株式会社 リジェラボ(横浜共創スペース)(〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい5丁目1番2号)です。最寄駅はみなとみらい線 新高島駅。4番出口(臨港パーク口)からの経路は、会場の公式アクセス案内をご覧ください。
参加申し込み・お支払い
参加費に含まれるもの
- 高田広章 教授による特別講演(50分)
- David Hetherington 氏による特別講演(80分)
- 村上和幸 氏による2部構成の講演(計3時間40分)
- 登壇者3名との議論と質疑応答(50分)
- MBSE Learning Journey 参加企業による実践事例の紹介(全4件・計55分)
- 昼食・軽食・夕食
- 懇親会(18:30–20:30・事前申し込み制)
参加費
一般 8,000円 税別 (税込 8,800円) 2026年9月30日(水)まで早期割引
一般 12,000円 税別 (税込 13,200円) 2026年10月1日(木)から
学生 2,000円 税別 (税込 2,200円)
定員最大100名(定員に達し次第、受付を終了します)申込締切2026年10月16日(金)まで
- 製品・システムの開発や製造を自ら行う組織に籍を置き、開発・製造の実業務、またはそのプロセスと力量管理に責任を持つ業務に携わっている方と、将来、製造業に従事し、開発の実務現場に就労する予定の大学生の方が対象です。それ以外の方のご参加はご遠慮ください。
- 会場の入館手続きのため、ご参加者全員分の連絡先と所属先が必要です。複数名でご参加の場合も、お一人ずつお申し込みください。ご登録時にメールアドレスに加えて、企業名・部署名・担当業務(大学生の方は学校名・学部名・学年)をご入力ください。
- 当日は会場内で写真撮影を行い、広報目的で使用する場合があります。
- お申し込み後のキャンセル・返金はお受けしておりません。
お支払いと当日について
- 決済は Stripe(外部の決済サービス)の画面で行われます。
- 関係者の方は、事前にお伝えしたコードを入力してお支払いください。
- お支払い後、Stripe から領収書メールが自動で送信されます。これを領収書としてご利用ください。別途の発行および適格請求書(インボイス)の発行には対応しておりません。
- 入館に必要なご案内は、開催の1週間前を目安に、会場の施設システムから送信されます。
- 学生料金でお申し込みの方は、当日学生証をご提示ください。
- 懇親会(18:30–20:30)は事前申し込み制です。参加費に含まれています。お申し込み時に、参加の有無をご選択ください。
- 昼食・軽食・懇親会とも、食物アレルギーへの個別対応はいたしかねます。
- 講演資料は、開催後に抜粋版を、お申し込み時のメールアドレスへお送りします。登壇者の許諾が得られた範囲での抜粋となります。
社内でご相談いただくために
ご参加には、1日分の業務時間と横浜までの移動の負担がかかります。社内でご相談いただく際にそのままお使いいただけるよう、要点をまとめました。「うちの規模には大げさではないか」「車載の話ではないか」「設計部門だけの話ではないか」。相談の場で出やすいこの3つにも、あらかじめ答える形にしています。
社内資料社内でご相談いただくために開く次の項目を記載してあります。件名日時・会場・費用目的適用範囲関係部門期待する効果効果が出るまで取り組みの順序質疑開催実績コピーして、社内の様式に合わせてお使いください。
件名: MBSE Learning Journey Showcase 2026 Autumn への参加について
- 日時: 2026年10月26日(月)9:20–18:10(懇親会 18:30–20:30)
- 会場: ヤマハ発動機株式会社 リジェラボ(横浜共創スペース)/横浜市西区みなとみらい5-1-2
- 費用: 一般 8,000円(税別・税込 8,800円)。2026年9月30日(水)までの早期割引で、10月1日からは 12,000円(税別・税込 13,200円)になります。学生 2,000円(税別・税込 2,200円)。いずれも昼食・軽食・夕食(懇親会)を含みます
- 主催: リベラルロジック株式会社
目的: MBSE 方法論を、実務に適用できる形で学びます。ISO/IEC/IEEE 15288 が示すライフサイクル(構想・開発・製造・運用・保守・廃棄)の全体にわたる判断の根拠を1つのモデルに束ね、整合性を検証できる形にしていく考え方を、組織への MBSE の定着を実際に担ってきた実践者の講演(計3時間40分)でたどります。MBSE 方法論の根底にある考え方を正しく理解することで、組織への MBSE 方法論適用の道筋を立てる起点とします。
適用範囲: MBSE は、特定の業界や大企業のための手法ではありません。本イベントで扱う方法論が対象とするのは ISO/IEC/IEEE 15288 が示すライフサイクルであり、この規格は業種も規模も限定していません。2026年9月時点の最新版である2023年版では、MBSE の適用に関する附属書も追加されています。むしろ、少人数で複数の役割を兼ね、特定のベテランの判断に依存している組織ほど、判断の根拠を形にして残す効果は大きくなります。属人化の防止、技術の伝承、要求の管理。いずれも組織の規模に依らず切実な課題です。モデル化する範囲も、全体を網羅する必要はありません。複雑な部分、変更が多い部分、安全やセキュリティ上重要な部分から、費用対効果で選ぶことが肝要です。
関係部門: MBSE は設計部門だけの活動ではありません。企画・営業・システム・ソフトウェア・ハードウェア・安全・セキュリティ・品質保証が、同じモデルを見ながら議論するための共通言語をつくる取り組みです。したがって効果は一部門にとどまらず、部門をまたぐ合意形成と引き継ぎの質に及びます。参加も、設計だけでなく関係部門から複数名で臨めると、持ち帰った内容をそのまま部門横断の議論に載せられます。
期待する効果: 手戻りと属人的な判断による無駄を減らすための具体的な進め方を持ち帰り、自部門および関係部門の開発プロセス改善の検討材料とします。中心となるのは、村上和幸 氏による2部構成の講演(計3時間40分)です。組織への MBSE の定着を実務として担ってきた実践者が、講演①で方法論の道筋を示し、講演②で実務への落とし込みを扱います。あわせて、組込みシステム開発を長く見てきた名古屋大学 高田広章 教授の特別講演から開発現場の動向を、David Hetherington 氏の特別講演から MBSE と機能安全・セキュリティが交わる領域の知見を得ます。同氏は、この領域の国際的な規格化(SAE J3187-3)の改訂を主導しています。
効果が出るまで: 効果は参加の直後に現れるものではありません。MBSE の定着には、教育とモデル作成の初期工数が先に立ち、成果が見えるまでは年単位の取り組みになります。今回の参加は、その全体像と必要な手順を、着手を決める前に1日で把握するためのものです。
取り組みの順序: MBSE の導入で失敗するのは、ツールの導入から入る場合です。順序としては、システムズシンキングの理解、共通プロセスの整備、方法論の採用、ガイドラインの整備、そして最後にツールの選定となります。本イベントが扱うのはこのうちの方法論であり、ツールを決める前の段階にあたります。選定に入る前であればその準備となり、すでに導入していれば、それを活かすために何が欠けているかの確認となります。
質疑: 登壇者3名との議論・質疑応答の時間(50分)があり、場合によっては課題解決のヒントに繋げられる可能性があります。
開催実績
社内で問い返されやすい点は、MBSE 導入でよくある誤解にまとめています。「MBSE は大企業向けである」「MBSE は設計者だけの活動である」「MBSE は特定産業のためのものである」といったよくある誤解を解くために、そのまま素材としてお使いいただけます。
お役立ち情報(その1):SYSMOD は Tim Weilkiens 氏が考案・体系化した MBSE 方法論
ここから先は、当日の理解を助けるためのお役立ち情報です。Tim Weilkiens 氏に許可をいただいて掲載しています。無断転載はご遠慮ください。この内容に興味を持たれた方は、ぜひ SYSMOD の書籍 をお買い求めください。
方法論、言語、ツール
SYSMOD は、モデリング言語とモデリングツールと組み合わせると MBSE 方法論になります。そうでない場合は、ドキュメント中心的アプローチの SE 方法論になります。出発点として優れています。そのうえで、自分たちの目的に応じて、SYSMOD を土台にした独自の方法論を導き出す。これを目的駆動の方法論(purpose-driven methodology)と呼びます。ステレオタイプを含む SysML のモデル要素も、カスタマイズを含むモデリングツールも、その方法論から導かれます。方法論が先にあり、言語とツールはその後に続きます。
手法(Methods)・言語(Languages)・ツール(Tools)は3つでセットです。どれかひとつだけでは成り立ちません。そして、その3つを動かすのは中心にいる人(People)です。起点は、左から矢印で入ってくる目的(Purpose)です。
目的が手法を定め、手法が言語とツールの使い方を決める。この順序が崩れると、ツールを入れたのに何も変わらない、ということが起こります。
お役立ち情報SYSMOD – Pragmatic MBSE with SysML開くMBSE 方法論SYSMOD – Pragmatic MBSE with SysML勘と経験に頼っていた判断を検証可能な形で組織内共有SYSMOD は、システムを実務的にモデリングするための MBSE ツールボックスです。SysML と組み合わせて使うのに適しています。役割と成果物を伴う一連の手法を備え、具体的な指針と例が、それらの手法を SysML でどう適用するかを示します。
SYSMOD を構成する主な要素
SYSMOD が何を定めているのかは、SYSMOD のオントロジーを見ることで理解できます。誰が(Role)、何を(Process)、どんな手法で(Method)行うのか。その作業には何が入力され、何が出てくるのか(Product)。方法論(Methodology)は、これらの組み合わせです。ツール(Tool)は、そのうちの Method を助けるものとして位置付けられています。
図の中で Tool から出ている線は、Method を助ける(facilitates)1 本だけです。関係が集まっているのは Method のほうです。
SYSMOD のドメイン知識モデルは、この構造を主要な概念とその関係として描いたものです。それぞれの概念は、次のように定められています。
- Role(役割): 手法を実行し、成果物に責任を持つ人に求められる力量プロファイルを表します
- Method(手法): システム開発において意味のある成果物を作り出す、一連の作業のまとまりです
- Product(成果物): 手法への入力となり、手法から生み出されるもの。その責任は Role が負います
- Process(プロセス): それらの手法をどの順序で実行しうるか、筋の通った基本的な流れを示します
役割ごとの力量(Skill & Competence)
直前の Figure 1.1 に、方法論を構成する要素のひとつとして Role がありました。SYSMOD は、その役割ごとに求められる力量も定めています。次の図は、システムテスタの力量(6段階、力量0 = スキル無しを含むと7段階)を9つのスキルに対して定義したものです。
| 力量 | 定義 |
|---|---|
| 0 | スキルがないNo skills. |
| 1 | その分野の知識があることを示せるExhibits knowledge of the topic. |
| 2 | その分野を理解していることを示し、基本的な概念を適用できるDemonstrates an understanding of the topic and applies basic concepts. |
| 3 | その知識を適用して、新しい問題を解決できるSolves new problems by applying the knowledge. |
| 4 | その分野を分析し、推論を立て、知識を難なく適用できるAnalyses the topic, makes inferences, and could easily apply the knowledge. |
| 5 | 要素を新しい組み合わせにまとめ、代替案を提案できるCombines elements in new patterns and propose alternatives. |
| 6 | その分野について判断を下し、成果物の質を検証できるMakes judgments about the topic and validates the quality of work. |
Tim Weilkiens SYSMOD – Pragmatic MBSE with SysML 第3版より。掲載許諾を得ています。
テストが突出し、SYSMOD・SysML・工学分野がそれに続きます。プログラミングやシステムアーキテクティングは相対的に低い。役割ごとに、求められる力量の形が違うことが一目で分かります。
これが力量管理の基です。 力量が管理されていなければ、プロジェクトに適切な経営資源を割り当てることができません。誰をどの役割に就けるのか、その判断の根拠がないまま人を配置すれば、プロジェクトは滞ります。プロジェクトの遂行に、力量管理は欠かせません。
SYSMOD のプロセス
方法論は、そのまま持ち込んで動くものではありません。組織は、さまざまな方法論を自分たちに合う形へテイラリングして適用します。SYSMOD は、そのプロセスも定義しています。
図の上段は、組織の上位層・間接部門・支援部門が行う仕事です。方法論を組織へ導入する Adoption Process と、それを支える Infrastructure Process。下段は、組織が用意したものを使う層です。Analysis Process と Architecture Process を、プロジェクトマネージャ・要件エンジニア・システムアーキテクトが担います。
一見すると、誰にでも描けそうな図です。けれど、こうした図があることで、複雑に見える構造が簡単に示されます。簡単になるから理解でき、理解できるから対話ができる。MBSE 方法論が現場にもたらすのは、この順序です。
SYSMOD インフラ構築プロセス
前節のテイラリングは、このプロセスの最初の活動です。方法論を自分たちに合う形へテイラリングする(Tailor the MBSE Methodology)。そこから3つの流れが同時に進みます。組織へ展開する(Deploy the MBSE Methodology)、教育と伴走を用意する(Provide MBSE Training and Coaching)、モデリング環境を整えて保つ(Set up and maintain the SME)。
このプロセスの成果(outcome)は、組織に合わせた MBSE 方法論が展開され、それを回す環境と、使い手の力量が揃っていることです。その成果を支える成果物(outputs)は3つです。
- MBSE 方法論 ― 組織に合わせてテイラリングされたもの
- システムモデリング環境(SME: Systems Modeling Environment) ― それを実際に回すための環境
- MBSE トレーニング ― 使う人が力量を身につけるための教育プログラム
方法論だけを配っても、組織は動きません。テイラリングした方法論と、それを回す環境と、使う人の訓練。3つが並んで進むことが、図に描かれています。
SYSMOD 要件分析プロセス
MBSE 導入プロセスとよく似た形をしています。違うのは、対象とするシステムです。導入プロセスが扱うのは MBSE 方法論そのものでしたが、分析プロセスが扱うのは、これから開発しようとしている製品です。同じ型を、対象を変えて当てています。
対象とするシステムを System of Interest(SoI)と呼びます。SoI は、工学的につくられたシステム(Engineered System)に限りません。組織、組織体、マネジメントシステムなど、構成要素から成るものはすべてシステムです。方法論も、役割と責任、求められる力量、手法、プロセス、成果物から成ります。MBSE 方法論になると、そこにモデリング言語とモデリングツールが加わります。方法論もまたシステムであり、そのシステムを分析して、組織や組織体に合ったシステムに仕立てることができます。
このプロセスの成果(outcome)は、問題と目的が明らかになり、誰のどの要求に応えて何を作るのかが、ステークホルダーと合意されていることです。その成果を支える成果物(outputs)は次のとおりです。
- ベースアーキテクチャ(Base Architecture)
- ドメイン知識(Domain Knowledge)
- 要件(Requirements)
- リスク(Risks)
- ステークホルダー(Stakeholders)
- システムコンテキスト(System Context)
- システムアイデア(System Idea)
- システム目標(System Objectives)
- システムプロセス(System Processes)
- システムユースケース(System Use Cases)
- ユースケースアクティビティ(Use Case Activities)
これらは別々の文書ではありません。1つのモデルの中で互いにつながっているからこそ、整合性を検証できます。図が込み入って見えるのは、その関連をすべて描いているからです。
SYSMOD アーキテクチャ定義プロセス
要件分析プロセスが「何を作るのか」を定めるのに対し、アーキテクチャ定義プロセスは「どう組み立てるのか」を定めます。要件分析プロセスの成果物、つまりシステムコンテキスト、要件、ベースアーキテクチャ、システムユースケースが、そのまま入力になります。
このプロセスの成果(outcome)は、要件を満たす構造が決まり、なぜその構造にしたのかを要件までたどれることです。その成果を支える成果物(outputs)は次のとおりです。
- 論理アーキテクチャ(Logical Architecture)
- 製品アーキテクチャ(Product Architecture)
- シナリオ(Scenario)
- システム状態(System State)
SYSMOD を補完する手法として、FAS(Functional Architectures for Systems) があります。図の左側に «Optional» として置かれている機能アーキテクチャ(Functional Architecture)は、この手法で得られるものです。FAS 手法の概念と詳細は、書籍 Model-Based System Architecture, Second Edition に記載されています。
どのアーキテクチャの話なのか
ここまでに、ベースアーキテクチャ、論理アーキテクチャ、製品アーキテクチャ、テストアーキテクチャ、機能アーキテクチャと、いくつもの「アーキテクチャ」が出てきました。会議で「アーキテクチャ」と言われて、どれの話なのか分からなかったことはないでしょうか。
SYSMOD は、それらを型として区別しています。
System Architecture と Physical Architecture は斜体、つまり抽象です。実体としては存在しません。「アーキテクチャ」とだけ言ったとき、それは何も指していない。 具体的になんのアーキテクチャを指しているのか明確に分離して考えることが重要になります。
汎用 SysML を、自分たちの組織に合わせてテイラリングする
SysML は汎用の言語です。あらゆるシステムを書けるように作られている分、そのままでは目の前の仕事の言葉になっていません。だから、組織に合わせて語彙を足します。SYSMOD が定めているのが、次のような拡張(ステレオタイプ)です。他にもありますので、さらに詳しい内容は SYSMOD の書籍 をご参照ください。
まず、アクター。SysML の Actor に、ユーザ、外部システム、センサ、アクチュエータ、機械システム、境界システムといった名前が与えられます。環境への影響も型として持っています。
そして、分野。要素がソフトウェアなのか、機械なのか、電気なのか。その区別を型として持っています。MBSE をソフトウェアの話だと思っていた方には、ここが意外かもしれません。
ブロックも同じです。システム、サブシステム、システムコンテキスト、ドメインブロック、文書ブロック、ユーザインタフェース。ここまでの図に何度も出てきた «domainBlock» や «systemUseCase» は、こうして定義された語彙でした。
汎用の言語を渡されただけでは、現場は動きません。組織に合わせてテイラリングする。 それが、インフラ構築プロセスの最初に置かれていた活動です。
お役立ち情報(その2):MBSE 方法論は何を変えるのか
決めたはずのことが後から覆る。部門をまたぐと前提が食い違っている。判断の理由を知っているのは、決めた本人だけ。手戻りは、その積み重ねとして現れます。原因は、判断の根拠が仕様書・議事録・個人の記憶に散らばっていることです。散らばったままでは、互いに矛盾していても気づけません。気づくのは、実装が進んで手遅れになってからです。方法論に従い、市場での要求から設計判断までを1つのモデルに束ねる。束ねてはじめて、整合性を検証できる形になります。そして対象を抽象的に捉えるからこそ、その抽象を満たす具体設計は、エンジニアが自由に選べます。
まず、「MBSE方法論は何を変えるのか?」ですが、SYSMODのようなMBSE方法論を採用すると、単に「モデルを描くようになる」のではなく、組織の意思決定、開発文化、レビュー方法、人材育成まで変わります。
お役立ち情報MBSE 方法論は何を変えるのか開く導入効果MBSE 方法論は何を変えるのかSYSMOD 導入で期待される10の変化Systems EngineeringやMBSEができない組織には共通して、要求が曖昧部門間連携が弱い設計根拠が残らない問題発覚が遅い属人化しているという特徴があります。SYSMODを導入した場合に期待される変化を見てみましょう。
変革1. 要求中心から目的中心へ変わる
Before
- 顧客要求をそのまま実装
- 「なぜ必要か」が不明
- 要求変更に弱い
After
- Stakeholder、Concern、Goalから整理
- システムの存在理由が明確
- 要求変更時も影響分析可能
期待できる成果
- 要求起因の手戻り減少
- 要求品質向上
- 顧客との合意形成向上
- 要求変更の影響追跡
変革2. 機能設計が体系化される
Before
- いきなりECU設計
- ソフトウェア設計から議論開始
After
- System Contextシステムを取り巻く環境の側から見て、境界とやり取りを定める
- Use Case
- Functional Architecture物理的な依存が無い機能的な設計
- Logical Architecture実際の部品に影響しない安定的な設計
- Product Architecture実際の部品に依存し変更には弱い設計
の順に整理
期待できる成果
- ソリューションに飛びつかない
- 機能漏れが減る
- 部品変更の影響を局所化
変革3. 部門間の共通言語ができる
Before
- 機械
- 「ここは機械の担当」
- ソフトウェア
- 「それは機械側の問題」
- 電気
- 「要求が分からない」
After
全員が同じモデルを見る
- Requirements
- Use Cases と、その中身を記述する Activities
- Blocks、Ports、FlowsArchitecture の静的設計
- InteractionsBlock 間のふるまい
- State Machine(s)System of Interest 全体のふるまい
を共有
期待できる成果
- 部門間の認識差減少
- 会議時間削減
- レビュー効率向上
変革4. 文書中心からモデル中心になる
Before
- Word 500ページ
- PowerPoint 200ページ
- Excel大量
After
- モデルがSingle Source of Truth
- 文書やレポートなどはモデルから生成
期待できる成果
- ドキュメント整合性向上
- 更新漏れ減少
- 保守性向上
変革5. 設計根拠が残る
Before
- なぜこう設計したか不明
- ベテラン退職で消失
After
- 設計決定(design decision)をモデル要素として記録
- 選定理由はモデル記述(model description)に残す
期待できる成果
- ナレッジ継承
- 設計説明責任向上
- 新人教育効率化
変革6. レビュー文化が変わる
Before
レビュー内容
- 要件管理ツールで、左に上位の要件、右に自分の要件を書くだけ
- 対応づけ(トレース)が張れているかは見える
- 要件そのものの良し悪しは、レビューする人の経験に委ねられる
After
SYSMOD のレビュー内容
- 要件
- Use Cases
- ActivitiesUse case activities
- Domain Block要件分析中に出てきた用語
- Test Cases
これらを突き合わせて要件をレビュー
期待できる成果
- 上流品質向上
- 要件を多面的に検証
補足
個々の要件を確認する観点 ― Necessary / Appropriate / Unambiguous / Complete / Singular / Feasible / Verifiable / Correct / Conforming(ISO/IEC/IEEE 29148 5.2.5 Characteristics of individual requirements)
要件の集合を確認する観点 ― Complete / Consistent / Feasible / Comprehensible / Able to be validated(ISO/IEC/IEEE 29148 5.2.6 Characteristics of a set of requirements)
変革7. 問題発見時期が早くなる
Before
問題発見
- 結合試験
- 実機試験
After
モデルレビュー段階
- 要求矛盾
- 機能欠落
- インタフェース不整合
を発見
期待できる成果
- 修正コスト大幅削減
- 後工程での手戻り減少
変革8. 安全・セキュリティ活動が統合される
Before
- 品質・信頼性
- ISO 26262
- ISO/SAE 21434
が別活動
After
同じモデル上で
- Risk品質・信頼性
- Hazard機能安全
- Threatサイバーセキュリティ
を管理
期待できる成果
- トレーサビリティ向上
- 整合性向上
- 監査対応効率化
変革9. 属人的開発から組織的開発へ変わる
Before
- 「あの人しか分からない」という状態
After
- モデルと支援文書が資産になる
期待できる成果
- キーパーソン依存低減
- 異動リスク低減
- グローバル開発容易化
変革10. システム思考が組織に定着する
これが最も大きな変化です。
Before
- 部品最適
- 部門最適
- プロジェクト最適
After
- システム最適
- ライフサイクル最適
- ビジネス最適
で考えるようになる
期待できる成果
- 部分最適の解消
- 最適なライフサイクル
- 事業判断との接続
経営視点で起きる変化
SYSMOD導入後3~5年程度で成熟すると、
が期待できます。
逆に言えば、SYSMODの本当の価値は「SysML図を描くこと」ではなく、「組織にSystems Thinkingを根付かせ、個人の経験や勘に依存した開発を、再現可能なエンジニアリングプロセスへ変えること」にあります。
投資が先行して進んでいる自動車業界では、ADAS、自動運転、SDV、サイバーセキュリティのような複雑システム開発が主流になりつつあるため、SYSMODを導入した組織と導入していない組織の差は今後さらに大きくなると考えられます。
航空業界では、型式証明を通すために、要求・設計・安全性評価の対応関係を示すことが以前から前提でした。ARP4754(現行版は2023年12月発行のB版)が示す開発プロセスはシステムズエンジニアリングそのものであり、判断の根拠を追跡できる形で残す実務がすでに積み上がっています。他の業界が機能安全やサイバーセキュリティの規格を通じていま求められ始めていることは、この分野では長く当たり前として扱われてきました。
お役立ち情報(その3):MBSE 導入でよくある誤解
MBSE方法論、特にSYSMODのような方法論の導入については、多くの組織で誤解があります。その誤解が原因で、導入に失敗したり、期待した効果が得られなかったりします。
はじめの3つは、言葉が何を指しているかの取り違えです。ここがずれたままだと、そのあとの話は噛み合いません。
よくある誤解と実際の対比を確認し、MBSEの本質の理解に繋がるヒントとしてお役立てください。
お役立ち情報MBSE 導入でよくある誤解開く導入の注意点MBSE 導入でよくある誤解現場で見かける15の思い込み以下はよく見かける代表的な誤解です。システムズエンジニアリングは職種名MBDをやっていればMBSEMBSE = SysMLを描くことツールを導入すれば成功するすべてをモデル化しなければならないモデルが仕様書を置き換える開発期間が短くなるモデラーがいればMBSEできる大企業向けである設計が小さいから要らない設計者だけの活動である要求品質問題は解決するSYSMODは図の描き方のガイドツールと教育から始める特定産業のためのもの誤解と実際を並べて見比べてみましょう。
誤解1. システムズエンジニアリングは職種の名前である
誤解
- 「システムエンジニア(SE)の仕事のことだろう」
- 「情報システム部門が扱う話だ」
- 「ソフトウェア開発の職種のひとつだ」
実際
システムズエンジニアリングは、職種の名前ではなく分野の名前です。
- 対象はISO/IEC/IEEE 15288が示すライフサイクル全体
- 複数の専門分野をまたいで、システムを成り立たせるための考え方と手順
- 担うのは特定の職種ではなく、企画・設計・安全・品質など複数の役割
補足
日本語では「SE」がシステムエンジニアの略として定着しています。名前が似ているだけで、指している対象も範囲も別のものです。
MBSE(Model-Based Systems Engineering)の「SE」は、職種のシステムエンジニアではなく、分野のシステムズエンジニアリングです。
誤解2. MBDをやっていればMBSEである
誤解
- 「Simulinkでモデルを作っているのでMBSEだ」
- 「モデルベース開発(MBD)はすでに導入済みだ」
- 「シミュレーションと自動コード生成をやっている」
実際
MBDとMBSEは、扱う対象が違います。
- MBDが扱うのは、主に決まった機能をどう実現するかです。制御則や振る舞いを実行できる形で作り、シミュレーションと自動コード生成で確かめます
- MBSEが扱うのは、何を作るべきかと、なぜそう決めたかです。目的・要求・機能・アーキテクチャと、その判断の根拠を1つのモデルに束ねます
補足
別物ですが、対立するものではありません。繋いだときに効きます。
- MBSE側で決めた機能とインタフェースは、MBD側のモデルが何を実現すべきかの根拠になります
- MBD側の解析結果は、MBSE側の設計判断の裏づけになります
すでにあるMBDの資産は、MBSE導入の妨げではなく接続先です。
誤解3. MBSE = SysMLを描くこと
これは最も多い誤解です。
誤解
- 「SysMLの教育を受けたのでMBSEができる」
- 「ツールを購入したのでMBSEを導入した」
実際
MBSEの本質は
- システム思考
- 情報の構造化
- トレーサビリティ
- 意思決定の可視化
です。
補足
SysMLは単なる表現手段です。
極端な話、
- SysMLを描いていてもMBSEではない
- SysMLを使わなくてもMBSE的な考え方は存在する
とも言えます。
誤解4. MBSEツールを導入すれば成功する
誤解
- Cameoを導入した
- Magic Cyber Systems Engineerを導入した
- Enterprise Architectを導入した
よってMBSE成功
実際
ツールは単なる道具です。
ハンマーを買っても大工になれないのと同じです。
成功には
- 方法論
- 教育
- ガバナンス
が必要です。
補足
実際に多いのは、高価なライセンスが数人の手元にとどまり、更新の時期になって稼働率の低さに気づく、という展開です。
誤解5. すべてをモデル化しなければならない
誤解
- 「システム全体を100%モデリングする」
実際
費用対効果が重要です。
モデル化すべきなのは
- 複雑な部分
- 共有が難しい部分
- 変更が多い部分
- 安全やセキュリティ上重要な部分
です。
補足
SYSMODでも「目的に応じたモデル化」が前提です。
誤解6. モデルが仕様書を置き換える
誤解
- 「もうWordは不要になる」
実際
現実には
- 契約文書
- 法規提出書類
- 顧客納入資料
- モデルから生成した文書
は依然として必要です。
補足
正しい考え方はモデルがマスターであり、文書はそこから生成される、です。
誤解7. MBSEを導入すると開発期間が短くなる
誤解
導入した瞬間から
- 手戻り削減
- 効率向上
- 開発短縮
が実現する
実際
最初は逆です。
導入初期は
- 教育への投資
- モデル作成工数
- プロセス変更
で生産性が落ちます。
補足
通常は
- 1年目:混乱
- 2年目:定着開始
- 3~5年目:効果顕在化
という傾向があります。
工数が増えたように見えるのは、新しい作業が加わったからではありません。ドキュメント中心的アプローチでは見えていなかった、本来やるべき作業が見えるようになったからです。品質問題を設計の上流工程で先に炙り出すか、市場に出してから後で問題に対処するか、の違いです。
誤解8. モデラーがいればMBSEできる
誤解
- 「SysMLが描ける人を育てればよい」
- 「モデリングツールの講習を受ければ回る」
- 「専任のモデラーを数名確保すれば始められる」
- 「描くのは担当者に任せ、他の人は従来どおりでよい」
実際
本当に必要なのは
- Systems Engineer
- Requirements Engineer
- System Architect
- System Tester
- Project Manager
- MBSE Admin
- MBSE Methodologist
- Domain / Discipline teams
です。
補足
モデリング技術は重要ですが、「何を考えるか」の方が「どう描くか」より重要です。
誤解9. MBSEは大企業向けである
誤解
- 大規模OEMだけが必要
実際
むしろ中小組織ほど効果があります。
理由は
- 属人化防止
- 技術伝承
- 要求管理
に効くからです。
補足
ベテラン1人に依存する組織では特に効果が大きいです。
誤解10. うちの設計はMBSEをやるほど大きくない
誤解
- 製品が小さく、部品点数も少ない
- 図面と仕様書で足りている
実際
基準は規模ではなく、判断の数とその絡み合いです。
小さな製品でも
- 複数の分野(機械・電気・ソフトウェア)が関わる
- 仕様変更が繰り返される
- 安全やセキュリティの根拠を説明する必要がある
のいずれかがあれば、判断の根拠を形にして残す価値があります。
モデル化する範囲も、全体を網羅する必要はありません。複雑な部分、変更が多い部分、安全やセキュリティ上重要な部分から、費用対効果で選べます。
補足
規模は後から変わります。大きくなってから始めるほうが、最初から根拠を残しておくより高くつきます。
誤解11. MBSEは設計者だけの活動である
誤解
- 設計部門が実施するもの
実際
本来は
- 企画
- 営業
- システム
- ソフトウェア
- ハードウェア
- 安全
- セキュリティ
- 品質保証
を繋ぐ仕組みです。
補足
MBSEは設計手法というよりも、組織横断のコミュニケーション手法です。
誤解12. MBSEがあれば要求品質問題は解決する
誤解
- モデル化すれば要求品質が上がる
実際
- 要求が曖昧なら、モデルも曖昧になる
- Garbage In, Garbage Outです
補足
MBSEは要求品質の問題を可視化しますが、魔法のように解決するわけではありません。
誤解13. SYSMODは図の描き方のガイドである
これはSYSMODに関する典型的な誤解です。
誤解
- Use Case図を書く手順
- Activity図を書く手順
- Block定義図を書く手順
を教えるもの
実際
SYSMODの本質は
- システムをどう理解するか
- どの順序で考えるか
- 何を決定するか
- 何をレビューするか
を定義することです。
補足
つまり、
- 「モデリング方法論」ではなく
- 「システム開発の思考方法論」
に近いものです。
誤解14. ツールと教育から始めれば導入できる
誤解
MBSEの導入は、
- ツール導入
- SysML教育
- 現場に丸投げ
の順番で進めればよい、という考え方です。
実際
しかし実際には、MBSE導入成功の鍵は
- Systems Thinkingを学ぶ
- 方法論(SYSMODなど)を採用する
です。
補足
この順番は、日本の製造業で特に多く見られます。その結果、「図は増えたが開発は変わらなかった」という状態に陥ります。
誤解15. MBSEは特定産業のためのものである
誤解
- 自動車や航空宇宙のための手法
- うちの業界には関係がない
実際
業種を限定する手法ではありません。
MBSE方法論が対象とするのはISO/IEC/IEEE 15288が示すライフサイクルであり、この規格は業種も規模も限定していません。2023年版では、MBSEの適用に関する附属書も追加されています。
複数の分野が関わり、判断の根拠を残す必要があるシステムであれば、業種を問わず効きます。
補足
ISO/IEC/IEEE 15288 が示すのはライフサイクルの枠組みです。これ一本で実務が回るはずもなく、例えば次の規格と組み合わせて使います。これ以外にも多様な規格への参照が必要です。
- ISO/IEC/IEEE 29148 ― 要件エンジニアリング
- ISO/IEC/IEEE 42010 ― アーキテクチャ記述
- ISO/IEC/IEEE 29119 シリーズ ― テスト
- ISO/IEC/IEEE 15289 ― 文書化
- ISO/IEC/IEEE 15939 ― 測定
これらも、業種を限定していません。
事例が車載や航空宇宙に偏って見えるのは、規制と安全要求が早くから厳しく、投資が先行したためです。手法そのものの制約ではありません。
まとめ
一言でいうと、MBSEはモデリング活動ではありません。ここが、導入で最も大きな誤解です。
実際には、MBSEは組織にSystems Engineeringを根付かせるための変革活動であり、モデルはそのための媒体に過ぎません。
この観点で見ると、SYSMODの価値はSysML図を増やすことではなく、組織の意思決定を再現可能かつ説明可能にすることだと言えます。
よくある質問
お問い合わせの多い項目をまとめました。
イベントについて
このイベントの目的は何ですか?
MBSE 方法論(SYSMOD)を、実務に適用できる形で理解していただくことです。本を読みツールを触っても止まってしまう「自分の現場でどう使うのか」という問いに、ヒントを持ち帰っていただくことがねらいです。
そのため、講演を聞くだけの一日にはしていません。実務で MBSE 方法論を導入してきた村上和幸氏の2部構成の講演を軸に、David Hetherington 氏と高田広章教授の特別講演、MBSE Learning Journey 参加企業による実践事例の紹介、登壇者3名との議論と質疑応答を置いています。講演資料は、開催後に抜粋版をご参加の皆さまへお送りします。
MBSE Learning Journey は、製造業の実務者が集まって MBSE 方法論を学ぶ無償・招待制の研究会です。Showcase は、そこで積み上げてきたものを招待の枠を越えて共有し、製造業の仲間同士が切磋琢磨できる場を広げるために開いています。
営業目的のイベントですか? 何か裏があるのでは?
いいえ。母体の MBSE Learning Journey は無償・招待制の研究会で、純粋な技術勉強の場として設計されており、営業活動の場ではありません。Showcase はその延長にあり、当日の講演・事例紹介・議論の中で製品やサービスの売り込みはありません。登壇者3名はいずれも主催者の社員ではなく、それぞれの立場からお話しいただきます。
リベラルロジック株式会社はコンサルティング会社ではなく製造業であり、この手のイベントで収益を上げる事を目的とした事業体ではありません。純粋に今日の日本の製造業の置かれた環境を考えた場合、自社を含め、製造業の仲間同士が切磋琢磨する環境があることが望ましい、との考えによるものです。偶然にも貴重な時間と知識や知恵を分け与えてくれる方々にも恵まれました。本イベントを通じて、それらを出来る限りの範囲で分かち合えればと純粋に考えた結果です。主催のリベラルロジックにとっては活動を知っていただく機会ではありますが、それは結果であって目的ではありません。
営利目的でないなら、なぜ有償なのですか?
有償にしている理由は2つあります。
ひとつは費用です。登壇者への謝礼、司会、逐次通訳、写真撮影、昼食・軽食・懇親会の食事などを合わせると、参加者お一人あたりの費用は参加費を上回ります。参加費は、実費の一部をご負担いただくものです。
もうひとつは、本当に参加意思のある方に申し込みを限定するためです。定員100名の対面イベントを無料にすると、申し込みだけして来場されない方が出て、参加したかった方が入れなくなります。学生料金を2,200円としているのは、この考え方を保ちつつ負担を下げたものです。
一般の参加費は2段階で、早期割引の期限を過ぎると上がります。期限と金額は参加申し込み・お支払いに記載しています。学生料金は期間を通じて変わりません。
申し込み・お支払いについて
参加対象外(コンサルティング会社・人材会社など)ですが参加できますか?
ご遠慮ください。本会は、製品・システムの開発や製造を自ら行う組織に籍を置き、開発・製造の実業務、またはそのプロセスと力量管理に責任を持つ業務に携わっている方と、将来、製造業に従事し、開発の実務現場に就労する予定の大学生の方を対象としています。ご自身の現場の疑問を持ち寄り、解決に繋がるヒントをお持ち帰りいただくための場だからです。
お申し込み後のキャンセル・返金はお受けしておりません。対象に当てはまるかご不明な場合は、お支払いの前にお問い合わせください。
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できません。お支払いは、外部決済サービス(Stripe)の画面で行っていただくもののみです。
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申し込み後にキャンセル・返金はできますか?
できません。お申し込み後のキャンセル・返金はお受けしておりません。決済が完了した時点で、お申し込みが確定します。
参加者の交代もできませんので、ご都合が合うことをご確認のうえでお申し込みください。
数人分をまとめて申し込めますか? 申し込み後に参加者を交代できますか?
どちらもできません。参加登録と館内入場システムにメールアドレスを登録する都合から、ご参加になるご本人が1人ずつお申込み下さい。同じ理由で、申し込み後に参加者を交代することもできません。
お申し込みの際は、メールアドレスに加えて、企業名・部署名・担当業務(大学生の方は学校名・学部名・学年)をご入力いただきます。複数名でお越しの場合は、お一人ずつご登録下さい。
懇親会だけ後から参加に変更できますか?
できません。お申し込みの際に、参加の有無をご選択ください。
懇親会(18:30–20:30)は事前申し込み制で、参加費に含まれています。ご参加になる場合も、追加のお支払いはありません。
当日について
当日の入館手続きはどうなりますか?
入館に必要なご案内は、開催の1週間前を目安に、会場の施設システムから送信されます。主催者からではなく会場側から届きます。当日は、そのご案内に従ってご入館ください。
講演資料は配布・公開されますか?
はい。開催後に、抜粋版をお申し込み時のメールアドレスへお送りします。システムズエンジニアリングと MBSE の考え方を、ご自身の職場へ持ち帰っていただくためです。
抜粋の範囲は登壇者の許諾によります。許諾を確認したうえでの送付となるため、開催から少しお時間をいただきます。外部組織やSNS等への共有は御遠慮下さい。
撮影・服装・途中退出について決まりはありますか?
- 録画・録音・撮影はできません。なお、会場内では主催者が写真撮影を行い、広報目的で使用する場合があります。
- 服装に決まりはありません。カジュアルな服装でお越しください。
- 入退室は可能です。館内セキュリティシステムを使用しますが、トラブルが発生した場合の対応や補償は致しかねます。
英語話者ですが、村上氏・高田教授の講演はどうなりますか?
日本語話者向けに行われるイベントの都合上、村上和幸氏と高田広章教授の講演には、英語への通訳が入りません。
英語で参加いただけるのは、David Hetherington 氏の特別講演(80分)とその質疑です。同氏の講演は英語で行われ、日本語への逐次通訳が入ります。日本語で寄せられた質問は英語へ通訳しますので、質疑のやり取りも英語で追えます。同氏は日本語の会話と読解もできます。
どの講演が何語で進むかは、タイムテーブルの下に記載しています。
内容について
SysML や MBSE の前提知識は必要ですか?
前提知識は不要です。本気でエンジニアリングに関する仕事のやり方を改革したいという方であれば、意義のある一日となると考えます。
事前に触れておきたい方のために、このページに読み物を3本置いています。読まずにお越しいただいても構いません。
6月の Tim Weilkiens 氏の回に参加していないと分からない内容ですか?
いいえ。今回の内容が単独でも成り立つようになっています。
6月の回は、SysML v1/v2 の共同開発者である Tim Weilkiens 氏をドイツから迎えた講演と懇親会でした。当日の様子は2026年6月18日の回に掲載しています。
特定のツールの話ですか?
いいえ。ツールに依存しない内容です。
MBSE の導入で失敗するのは、ツールの導入から入る場合です。順序としては、システムズシンキングの理解、共通プロセスの整備、方法論の採用、ガイドラインの整備、そして最後にツールの選定となります。本イベントが扱うのは方法論であり、ツールを決める前の段階にあたります。選定に入る前であればその準備となり、すでに導入していれば、それを活かすために何が欠けているかの確認となります。
MBSE Learning Journey について
MBSE Learning Journey 本編に参加するにはどうすればいいですか?
誠に申し訳ございませんが、関係者からの推薦による招待制とさせていただいております。
Showcase は、MBSE Learning Journey で積み上げてきたものを、招待の枠を越えて共有するために開いている場です。
